釣具の買取事情。リール・ロッドの人気ブランド相場

釣具の買取事情

「このリール、売ったらいくらになるんだろう」

物置の奥からロッドケースを引っ張り出して、ファスナーを開けたままそう考えたことはありませんか。何年か前に勢いで揃えた竿とリールで、最後に海へ持って行った日はもう思い出せない。ハンドルを回すと、なんとなく重い気がする。

どうも、荒木岳です。スポーツ用品店で10年働き、ゴルフ・キャンプ・自転車の売り場を担当してきました。釣り売り場には立っていませんが、釣りは長く続けている趣味で、リールを分解して洗い、グリスを入れ直すところまでは自分でやります。かつての我が家の物置も、キャンプ道具とゴルフクラブと釣具でパンパンでした。

釣具の値段は、ブランド名だけでは決まりません。同じメーカーでもシリーズの格で差がつき、さらに「メーカーがまだ直せるかどうか」という、外からは見えない条件が効いてきます。この記事では、業界団体の統計で市場の現在地を確かめてから、値が付きやすいブランドとシリーズ、査定で見られる箇所、古いリールの値段を左右する「製造中止から6年」の線までお話しします。

釣具の市場はコロナ前の水準に戻った

まず、釣具の市場がいまどこにいるのかを数字で見ておきます。

日本釣用品工業会が2026年2月に公表した第29回「釣用品の国内需要動向調査報告書」のサマリーによると、メーカー出荷ベースの国内出荷規模は次のように動いています。

年国内出荷規模前年比
2019年1,397億1,000万円100.4%
2020年1,547億円110.7%
2021年1,790億7,000万円115.8%
2022年1,686億2,000万円94.2%
2023年1,491億1,000万円88.4%
2024年1,397億6,000万円93.7%
2025年(見込み)1,374億円98.3%
2026年(予測)1,400億8,000万円102.0%

同工業会は2020年以降の伸びを「コロナバブル」と表現し、2022年からは反動減が続いているとしています。目を引くのは2024年で、2019年とほぼ同じ額なんですよ。2021年の山がそっくり消えて、出荷はコロナ前の位置に戻りました。2026年は、わずかにプラスへ転じる予測です。

ここからは私の読みですが、2020年から2022年の3年間に、2019年の水準を上回った出荷額を足し合わせると約832億円になります。その分の竿やリールは、消えたわけではありません。釣りを続けている人の手元にあるか、始めたものの出番がなくなり、物置やクローゼットで眠っているかのどちらかです。眠っていた道具が中古市場に出てくれば、同じ機種の在庫が増え、ありふれた機種から値が付きにくくなります。そのとき値を保つのはどんな道具か、というのが次の話です。

値が付くのは上位機種と定番シリーズ

中古で値が付きやすい釣具は、メーカーの上位機種と、長く続いている定番シリーズです。リールならシマノとダイワ、この二社が査定の場でも話の中心になります。

スピニングリールは価格で序列が見える

二社とも、同じスピニングリールの中に価格帯の違うシリーズを何段も並べています。公式サイトに載っているメーカー希望本体価格(税抜)のおおよその価格帯で主なシリーズを並べると、序列がはっきり見えます。価格は改定されることがあるので、目安として見てください。ダイワ側の価格はダイワ公式の製品一覧(リール)で確認できます。

シマノ希望本体価格の目安ダイワ希望本体価格の目安
ステラ9万円台EXIST10万〜11万円
ヴァンキッシュ6万円台エアリティ6万円台
ツインパワー5万円台セルテート5万〜6万円
ストラディック3万円前後ルビアス5万円前後
アルテグラ2万円前後カルディア3万円前後
ナスキー1万円台フリームス2万円前後
サハラ1万円前後レブロス1万円台前半

横の並びはそれぞれ価格の高い順に置いただけで、同じ格という意味ではありません。頂点にいるのは、シマノが「スピニングリールの頂に挑み続けてきた」と紹介するステラと、ダイワが「フラッグシップスピニングリール」と位置づけるEXISTです。新品では手が出ない人が中古で探す機種でもあるので、買取店にとっては仕入れたい在庫になります。査定で強いのは、この頂点と、その一段下の上位機種までと考えておくと外しません。

相場は「希望価格の何割」で考えない

よく「定価の何割で売れるか」と聞かれますが、この物差しは釣具にはあまり向きません。釣具は希望本体価格から値引きされて店頭に並ぶことが珍しくなく、自分が実際に払った額と希望価格の間には、もともと差があるからです。

そのうえで、相場は時期と状態で動きます。後継モデルが発表されれば旧モデルの値は下がりますし、狙う魚のシーズンが始まる前は、その釣りの道具を探す人が増えます。新モデルと旧作相場の関係は、ゴルフクラブの記事ゴルフクラブの買い替えサイクル。新モデル発売と旧作相場の関係で書いた構図とよく似ています。

入門機にも触れておくと、希望本体価格が1万円前後のリールは、状態が良くても金額そのものが小さくなります。買取店が点検して清掃し、店頭に出すまでの手間は高級機とあまり変わらないので、そこを差し引くと手元に残る額は薄い。入門機は単品より、竿や小物とまとめて出すほうが話が早いです。

ロッドは釣りのジャンルごとに頂点が違う

ロッドはリール以上に、釣りのジャンルごとに最上位のシリーズが分かれています。ダイワの公式サイトで見ると、鮎竿の銀影競技スペシャルは希望本体価格が40万円前後、さらに高いグランドスリムは50万円前後です。一方、バス用の上位シリーズであるスティーズは10万円を切る価格帯に収まっています。同じメーカーの上位品でも、釣りの種類によって価格に4〜5倍の開きがあるわけです。ロッドの値段を考えるときは、ブランドより先に「何の釣りの、どの格の竿か」を確かめてください。

査定で見られるところ

ここからは、物置から出した道具を自分で点検するつもりで読んでください。

リールはハンドルを回して確かめる

  • ハンドルをゆっくり回したときに、ゴリゴリした感触がないか
  • ハンドルやローターを指で揺すって、カタカタとしたガタがないか
  • 空回しでは静かなのに、糸を指でつまんで負荷をかけながら巻くと音が出ないか
  • ラインローラーが指先で軽く回るか
  • ベールの返り具合と、スプールやボディの傷

3つ目の症状について、ダイワのアフターサービスを担うSLPのリールQ&Aは、ラインローラー部のベアリングやカラーの塩ガミ・錆を原因に挙げています。塩ガミは、入り込んだ海水の塩分が乾いて結晶になり、回転部を噛んでしまう状態のことで、シマノも防錆ベアリングの説明で「塩分再結晶化による塩ガミ」と書いています。

物置から出てきた私の古いスピニングリールも、まさにこれでした。最後の釣行が堤防のサビキ釣りで、帰ってからシャワーで流したつもりだったのに、ラインローラーが固まっていたんです。分解して洗えば戻る程度でしたが、査定の場ではその手間がそのまま減額の理由になります。

ロッドは光にかざして確かめる

  • ガイドのリングに割れや欠けがないか。綿棒を通すと、引っかかりでわかる
  • ブランクス(竿の本体)に深い傷や、塗装の割れがないか
  • 継ぎ目が固着していないか、逆にゆるくなっていないか
  • グリップのベタつきや、コルクのえぐれ

SLPのロッドQ&Aを読むと、継ぎのゆるみは肉盛りで直せること、固着を繰り返す竿には1シーズンほど効果が続く加工ができること、グリップのベタつきは塗装のやり直しで対応できることが書かれています。直せる症状は多いのですが、買取の場では「直してから売る分」が差し引かれます。私が真っ先に見るのはブランクスの傷で、ここは手直しが利きにくく、折れる前触れにもなるからです。

付属品は次の持ち主のためにある

元箱、保証書、取扱説明書、替えスプール、外した純正パーツ、竿袋。このあたりは揃っているほど査定でプラスに働きます。

見た目以上に効くのが保証書と購入時のレシートです。シマノの修理規約は、修理やオーバーホールの対象を国内正規品に限っていて、申し込みの際に購入日と販売店がわかる書類を求めています。ダイワのSLPも、海外向けモデルは国内共通部品が使えない部位だと修理できないとしています。保証書やレシートは「国内正規品で、いつ買ったか」の裏付けになり、次の持ち主がメーカーの整備に出すときの安心材料になる。だから買う側にとって価値があるわけです。

替えスプールも単なるおまけではありません。SLPは替えスプールのオーバーホールも受け付けていて、本体と同じく整備の対象になる部品です。

古いリールの値段を決める「製造中止から6年」

古いリールの値段を考えるとき、私が一番気にしているのが補修部品の保有期間です。

シマノは「修理不能品について」というページで、リールと釣竿の補修用性能部品を製造中止後6年間保有するとしています。6年以内でも部品を保有できなくなる場合があると断ったうえで、パーツ価格表や取扱説明書のページに載っていない古い年式の製品は、すべて修理不能品としています。ダイワ側は先ほどのSLPのロッドQ&Aで、生産中止を起点に最低6年間はすべてのパーツを保有すると答えています。6年を過ぎても、他の機種と共有している部品は供給が続き、専用部品は在庫がなくなりしだい終わる、という説明です。リールでも、22EXISTのオーナー向けアフターサービスは、初回オーバーホール手数料の無料などに「パーツ保有期限内に限ります。(生産中止から6年間)」と条件を付けています。

どちらも、数え始めは「発売」ではなく「製造中止」です。何年も売られ続けた定番機なら、発売から10年近くたっていても、まだメーカーの面倒を見てもらえることがあります。逆に、短い期間で後継機に切り替わった機種は、発売からの年数のわりに早く線を越えます。年式の新しさより、いまメーカーが部品を持っているかどうかで見てください。

この線が値段に効くのは、直せないリールを店も次の持ち主も抱えたくないからです。部品があれば、多少くたびれた個体でもオーバーホールで巻き心地を取り戻せます。部品がなければ、ギアが一枚欠けた時点で終わりです。品番を控えて、シマノならパーツ価格表、ダイワならパーツ検索で、自分のリールがまだ載っているかを確かめてみてください。

社外パーツは純正に戻してから出す

ハンドルノブやハンドルを社外品に替えている人は要注意です。シマノの修理規約は、社外品が取り付けられた製品を改造品として修理の対象外にしていますし、SLPも社外パーツは純正に戻すか、外した状態で預けるよう求めています。私もノブを社外品に替えていた1台を、手放す前に純正へ戻しました。外した純正ノブを元箱に入れておいたのが救いでした。

自分でやる手入れは「洗って乾かす」まで

手入れの話をすると止まらなくなるのですが、売る前にやることは多くありません。真水で塩を流し、日陰でしっかり乾かし、外側の汚れを拭き取る。ここまでで十分です。

分解は、元に戻せる自信がある機種だけにしてください。ダイワはマグシールド部と、そのベアリングへの注油や分解を「絶対にしないよう」案内しています。シマノの修理規約も、メーカー以外の者が不当な修理をした製品をサービスの対象外としています。よかれと思って開けた跡が、次の持ち主の整備の道をふさぐこともあるんです。

まとめ

  • 釣具の国内出荷規模は2021年の約1,791億円から2024年は約1,398億円となり、コロナ前の水準に戻った
  • 値が付きやすいのは、ステラやEXISTを頂点とする上位機種と定番シリーズ
  • 相場は希望価格の何割かではなく、時期と状態で動く
  • ロッドは釣りのジャンルごとに頂点が違い、上位品どうしでも価格に数倍の開きがある
  • リールは巻き心地・ガタ・塩ガミ、ロッドはガイド・ブランクス・継ぎが見られる
  • 保証書や純正パーツは、次の持ち主がメーカー整備を受けるための裏付けになる
  • シマノもダイワも、補修部品の保有は製造中止から6年が一つの基準

次の休みに、物置のリールを1台ずつ出して、ハンドルを回してみてください。品番を控えて、メーカーのパーツ価格表やパーツ検索にまだ載っているかを調べる。載っていれば、オーバーホールに出して使い続ける道があります。釣りに戻る予定がないなら、部品の保有期間が切れる前に、釣具の扱いに慣れた買取店で一度査定を受けてみる。どちらを選ぶにしても、最初の一手は真水で塩を落として乾かすことです。